京 その夜

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「そうじゃ…な」 確かに、おりょうの言う通りだ。頭では判っていた。 時代の波に乗る者、抗う者、別の波を作ろうとする者。そして、高い所からそれを見つめる者… 混乱の世には、様々な所からそれぞれの思惑で事を荒立て、後の己の地位の礎を築こうとする。 薄汚い考えを持った者が往々にして甘い汁を吸い、大志を持ち純粋に明日を考え突き進んだ者は利用され、志半ばに散って逝く… そんな理不尽で報われない世の中。 何が正しくて何が悪いのか…そんな事は誰にも判らない。 皆、己の信じる道をただ突き進む…例え先が無いと判っていても。 「お互い、後悔はせんようにな…」 龍馬は、呟いた。 そんな龍馬の呟きを、おりょうは聞こえないふりをして、団扇で風を送りつづけていた。
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