そして…

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普段、感情を出さない歳三の動揺を見た沖田は、廊下で様子を伺っていた。 「…っぅ…」 押し殺した嗚咽と、何かをたたき付ける音が歳三の部屋から聞こえた。 歳三の動揺の理由を沖田は知るよしもなかったが、心配しながらも歳三の部屋から離れ掛けた時 「総司、いるんだろ?」 襖越しに歳三が呼び掛けた。 「何か…」 沖田はゆっくり襖を開け、中に入った。相変わらず歳三は背中を向けたままだった。 「内密な頼みがある」 ゆっくり、言葉を搾り出すように言った。 「土方さん、下手人捜しっすか?」 歳三の言葉を全て聞く前に沖田は聞き返した。 「あ、あぁ…いや。今の事は聞かなかった事にしてくれ…」 いまさら龍馬殺しの下手人を捜し出したところで、どうにかなるものでもないのは、歳三自身良く判っていた。頭では判っていたが、気持ちの整理がつけられず、思わず口を出た言葉を取り消した。
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