黒船来航

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「を、先客か…」 不意に背後からの声に、彼は我に返った。 喧騒から逃れて来た彼にとっては、招かざる客だった。うっとおしげに声の方を一瞥して、再び視線を黒船に戻した。 遠くに停泊しているそれは、動くわけでもなく、中の様子がわかるわけでもなく。ただの黒い塊だ。 彼は黒船の姿を脳裏に焼き付けるかのように、凝視していた。 「まっこと、おぉきいぜよ…」 後からやってきた男はいつの間にか彼の横に立ち、一緒に黒い塊を見ている。 男の眼差しは、彼とは異なり、子供のように興味津々に見つめている。 彼は、そんな招かざる客の登場に興醒めしたのか、立ち去ろうと荷物をまとめ始めた。
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