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「どうって…」
彼は返事に詰まるった。
船の大きさや見知らぬ外国の脅威を身近に感じたが、それだけでは無い何かを感じていた。そして、その『何か』が、彼の中では大きかった。
でも、『何か』が何なのかを説明出来ない。
「わからねぇ。ただ、恐怖感はねぇな…」
今自分が抱いている気持ちや感想を伝えられない事をもどかしく思い、眉をしかめつつ、答えた。
「ワシもじゃ。乗れるモンなら乗ってみたい」
男は子供のように眼を輝かせて話す。
「ワシァ、坂本龍馬。土佐から剣術の修業に江戸にきたんじゃ」
くったくの無い笑顔で続けた。
突然の自己紹介に彼は戸惑いながら、
「俺は…」
と、口を開きかけると
「薬売りか?」
龍馬は彼の足元におかれた木箱を見ながら言った。
「ま…な」
と、だけ答えた。
「効くのか?」
「さぁな」
「素っ気ないのぉ~」
龍馬は大袈裟に頭を抱えた。
それとは対照的に彼は
「男相手に愛想をふりまいても得は無い」
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