プロローグ

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  地図に滴る汗、左右を見渡す。 ため息をひとつ、手の甲で染み出る水滴を拭いてハーフパンツに擦る。 後ろでは騒ぐ声、もうひとつため息。 香水の匂いが鼻に触る。 Tシャツの裾が引っ張られる。早くしろと騒ぐソイツ。 「ねえ、まだなの?」 うるせぇ。まだだよ。こちとら忙しいんだ。少し黙っててくれないか。それと、その香水どうにかならないか?鼻に触る。 「え?いい匂いじゃん。文句ある?それより、川原河南はそろそろ充電切れであります」 と敬礼しながら言う。  文句ある。嫌いな匂いじゃないがシュッシュカ付け過ぎだ。 実に厄介だ。別にコイツは嫌いではない。むしろ好きな部類だ。一緒にいて楽なヤツだ。しかしこういう状況で騒がれると少しばかりキツいモンがある。 なぜこうなったのか、もとの発端は親同士の策略によるものだった。
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