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「内さん、ちょっといいですか?」
暫く亮ちゃんを待っていれば先生に呼ばれた。そのときの先生は、どことなく暗い顔をしていて嫌な予感が胸中に広がる。
「…錦戸さんですが、目を覚ますことは残念ながら厳しいでしょう。ですが、目を覚ます可能性も僅かにあるので力の限り頑張っていきましょう。」
…亮ちゃんが目を覚まさへん?ってことはあの大好きなはにかむような笑顔も、大好きな声も聞けへんの?そう思ったら自然に涙を流してた。
泣き終えたころ、どうしたら亮ちゃんがもう一度起きれるようになるかを自然に考えていた。
そして俺は亮ちゃんのためになんでもすることに決めた。起きる可能性があるなら、何だってする。その日から毎週亮ちゃんの元に来て亮ちゃんに話し掛けた。
「…なあ、亮ちゃん。あの日から1年経ったんやで。時間が経つのって早いな。」
相変わらず機械に繋がれたままの亮ちゃんに話し掛ける。
ふと思い出したようにポケットに手を入れれば、あの日渡し忘れた指輪を取り出し亮ちゃんの指に嵌めた。
「…亮ちゃん、好き。また明日来るな?」
立ち上がり椅子を直せば病室を出た。…いや、出ようとした。
「…う、ち。指輪、あり…がと。」
亮ちゃんの声が聞こえた気がし振り返れば、弱々しく起き上がりながらもにっこりと微笑む亮ちゃんが居た。
「…亮ちゃん!」
病院の中だと言うことも忘れ走って相手に駆け寄れば、嬉しさのあまり涙を流しながら思い切り抱き締めた。
「…お、い。病人、やぞ…。」
弱々しくクスクスと笑み浮かべながら、ごめんごめん、と相手を抱き締める腕の力を緩める。
「…もう、絶対離さへんから。」
「ありがとな、内。」
にっこりと微笑みながら暫く見つめ合えば、どちらからともなく唇を重ねた。
(夜空舞う白雪がとても綺麗で)
(まるで君みたいだと思った)
end.
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