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「…痛っ!」
「お兄ちゃーん。どこ見て歩いてんねーん。」
…酒臭い。酔っ払いのおっさんにぶつかってしまったみたいでしつこいくらいに絡まれる。もう、いい加減面倒くさいし少し怖かったので逃げようと思ったとき
「止めてあげてくれませんか?あなたがぶつかってきたん俺ちゃんと見ましたよ。」
「あー?兄ちゃんいちゃもんつけてる気かー?」
「…なんなら、相手しますけど?」
指を鳴らしながら睨み付けてくる丸山さんに怖じ気づいたのか、おっさんは素早く逃げていった。
…不覚にも丸山さんが格好良く見えた。少し怖かったのもあり気がついたら丸山さんに抱きついていた。
「…安田くん!?」
「しょーた。しょーたって呼んで。」
「章大?どうしたん!?」
…勢いで抱きついてしまったけど、今になってなんかめっちゃ恥ずかしなってきた。丸山さんと目を合わせられへんくて、俺は軽く俯いた。
「優しくしてくれな嫌やからな。ちゃんと甘やかしてくれなすぐに別れるからな。」
「…え、何言って、」
「しゃーないから付き合ったるわ。」
ゆっくりと顔を上げ訳が分からないとでも言うような顔で見つめてくる丸山さんの頬に軽く口付ければクスッと笑みを浮かべた。
「夢、やないよな?」
「…夢ちゃうよ。」
手を繋げば伝わる丸山さんの鼓動。実は自分も同じくらい緊張していて。それが何だか可笑しくて、再び笑みを浮かべながら寄り添えばゆっくりと歩きだした。
(あほで変態でイケメンで)
(そんなあなたに恋をした)
end.
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