たとえ忘れようとも 緑青

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「…貴方は、誰?」 目の前にいる人に問いかけると悲しそうに微笑みながら大倉やで、と名前を教えてくれた。 よろしくなと言われて差し伸ばされた手自分の手が触れ合えば、何だか懐かしい感じがした。 (たとえ忘れようとも) 「ヤースー、早よ準備して。」 「んー、ちょっと待って!」 あれー、どこにやったんかな?と独り言を呟きながら指輪を探す。 とにかく思い当たるところをくまなく探しているんやけど、全然見当たらへん。 「ヤス、どうしたん?」 「いや、大倉からもらった指輪どこやったかなーって。」 「…はあ?ヤスの指についてるやん、ちゃんと。」 不思議そうな顔をして見つめてくる大倉に、ほんまや、とクスクスと笑いかけながら玄関を出る。 自分の指を見てみると、見覚えのないデザインの指輪。あれ?これが大倉から貰った指輪やったかな? そんなことを考えている間にもどんどん歩いてく大倉に追いつくために小走りで相手の元へと駆け寄る。 今日は久しぶりの大倉とのデート。ほんま久しぶりすぎて自然と顔がにやける。 「あれ?どっちやったっけ…」 「ヤスが道に迷うなんて珍しいな」 いつものアクセサリー屋さんに行こうとしても、道が思い出せない。いつも通ってた店やのに。しかもさっきから頭が痛い。
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