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暫く走れば、昔みんなで遊んでた公園が目に入り更に急いで病院に向かった。
「…横山君!ヤスどこ?」
「302号室やで。早く行ってやれや。」
病院に着けば横山君に部屋の番号を聞き、急いで章大の居る病室に向かった。
「…章大。」
病室で静かに寝ている恋人は、色々な機械が体に取り付けられていた。…まるで、機械で辛うじて生かされているみたいやった。
「なあ、章大。起きて、まだ何も思い出残せてへんやん。ほら今日も、デート行く約束やったやん。早よ起きてって…」
一生懸命話しかけても何にも反応しない章大。いや、反応ができないんやな。それでも、何とかして起こそうと必死に話し掛けた。
暫くすればいきなり機械が大きな音を出し始めた。それと同時に章大を診てくれている先生や看護士さん達が章大を囲み始める。
先生や看護士さん達が章大を囲んでいる間、俺は少し離れたところから早く章大が起きてくれるように必死に願っていた。
すると突然、看護士さん達がゆっくりと章大から離れ俺を呼び出した。
「…全力を尽くしたのですが。」
急いで章大に近寄れば、いつも寝ているときに見るような安らかな寝顔をした章大がいた。…章大が俺の前から居らんくなるなんて信じられへんくて、人目も気にせずに大声を出して泣いた。
章大が俺の前から居らんくなってから暫く経ったある日。俺は、無意識に昔みんなで遊んでいた公園に来ていた。
ここに咲いてる綺麗な花は、みんなに内緒で種を埋めた2人だけの秘密の花。
綺麗に咲く頃に2人でまた来ような、って俺の大好きな笑顔で言っていた章大を思い出す。
2人で埋めた花に手を伸ばし、そっと花びらに触れれば舞い落ちて足元に散った。
「…なあ、見える?2人で植えた花、綺麗に咲いたで。」
足元に散った花びらを拾い集め空に手を伸ばし天にいる恋人に見せるように言った。
(君を思い出にできる頃には
きっと涙も乾くだろう)
(サヨナラと告げて散った花びら
今は小さなつぼみとなって)
end.
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