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「もう、こんな季節か…。」
ふと、顔を上げればいつもの道は綺麗なイルミネーションで彩られていた。
(snow white)
亮ちゃんの大好きな笑顔を見れなくなってちょうど1年。急ぎ足で流れる季節に抵抗をするかのようにふと立ち止まってみる。
「…綺麗やな。」
亮ちゃんと一緒に見たかったな、なんて思いながら再び歩き出す。街のイルミネーションをゆっくりと眺めながら亮ちゃんが居る病院へと向かった。
「久しぶり、亮ちゃん。」
病室に入ると、たくさんの機械に繋がれている亮ちゃんに声を掛けた。近くにある椅子に座り亮ちゃんを見つめれば、微笑んでくれたような気がした。
1年前のクリスマス、俺は亮ちゃんとデートをする予定やった。
「内、まだー?」
「はいはい、待って。今行くから!」
玄関で寒そうにしながらも待ってくれている亮ちゃんに気付かれないようにプレゼントをするために買っていた指輪をポケットに入れれば急いで玄関へ向かう。
「もー、お前遅いねん!」
「ごめんごめん、行こっか。」
ぶつぶつ文句を言いながらもどことなくうれしそうな笑顔を浮かべている相手を見つめれば、思わずクスッと笑み浮かべてしまった。
「…何笑てんねん。」
「何でもないで。早よ行こう!」
クスッと笑み浮かべたまま相手の手を握れば歩き始める。
いつもは、恥ずかしいと言ってなかなか繋がせてくれない亮ちゃんも今日は機嫌がいいみたい。亮ちゃんの方からぎゅっと握ってくる。
銀杏並木の傍をゆっくりと歩き予約していたお店が見えてくれば、あと少しや、と急ぎ足でお店に向かった。
横断歩道の真ん中辺りに来ると、いきなり「あぶない!」と言って亮ちゃんは俺を突き飛ばした。
「…痛いやん!」と文句を言おうとして立ち上がれば、車に轢かれて横たわる亮ちゃんが目に入った。
「亮ちゃん…亮ちゃん!」
亮ちゃんに駆け寄れば大きく揺さぶりながら亮ちゃんの名前を呼ぶ。気付いたときには誰かが呼んでくれたらしい救急車に亮ちゃんが乗せられ一緒に救急車に乗り込み病院へと向かっていた。
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