333人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「やっすだくーん!」
「…うわ、来た。」
深夜のコンビニは暇で暇で小さく欠伸をすれば自動ドアが開いた。思わず自動ドアの方に視線を向ければにっこりと笑顔を浮かべながら近寄ってくる丸山さん。
うわ、また来た。なんぼ暇人やねん、この人。正直苦手やねんなー、丸山さん。でも、嫌い、ではなかったり…。
(手を繋ごう)
「安田くんに会いに来てもうた!」
「…はいはい。」
ビシッと格好いいスーツで毎回来るのは仕事終わりに寄っていくかららしい。あ、丸山さんの仕事はホストやねんて。やから、深夜にバイトを入れてる俺と時間が被る。
「安田くん、いい加減付き合ってーや。てか一回ヤってみよ!俺のテクを堪能してくれたらきっと安田くんやってイチ、」
「…わー、ストップストップ!もう、黙っててください!」
…黙ってれば、男前やのに。丸山さんはそれは素晴らしいほどの変態で、いつもめっちゃ軽く告白してくる。
俺、見た目は金髪やしピアスとかめっちゃつけてるからチャラく見えるかもしれへんけど、ほんまはめっちゃ真面目やねん!かるーく、告白してくる人となんか絶対付き合わへん!
「ええやん、ケチー。」
「…ケチちゃうし。」
ずっと丸山さんが何か言うてたけど一々相手してられない。最後の方は適当に相槌を打ちながら話を聞いていた。
暫くすれば、一通り話をしスッキリしたのか、自分のバックを漁りだし徐に何か取り出した。
「はい、これあげる!」
「あー、これめっちゃ欲しかったやつやん!え、ほんまにいいんですか?」
「ええよー。めっちゃ欲しがってたしあげる。」
にっこりと微笑みながら丸山さんは大好きなアーティストさんのサイン入りのCDを俺にくれた。
好きなアーティストさんが一緒やったり音楽をやっていたりと意外にも共通点がある俺たち。
実は、たまに遊びに行かせてもらうこともあったり…。そういえば前に家に上がらせてもらったときに、たまたまそのCDを見つけめちゃくちゃ羨ましがってたっけ。
「あげるから、今日遊びに行かへん?」
「…しゃーないから、遊んであげます。」
「え、ほんま?やった!」
意味が分からない歌を歌いながら奇妙なダンスを踊って喜んでいる丸山さんに、つい笑みを零してしまった。
まだ踊り続けている丸山さんから視線を逸らし、ふと時計に目をやればそろそろ上がる時間。
最初のコメントを投稿しよう!