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★locus-1 〈 月城清果(つきしろ・さやか)〉
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ある晴れた、秋の日の朝。
月城清果(つきしろ・さやか)は、仕事場に向かって自転車を走らせていた。
途中、広い原っぱの空き地の横の小さな公園に入り、自転車を止める。
ブランコと砂場、それにたった一つのベンチしかないちっぽけな公園。
けれども横に広がる空き地のおかげで、広い空がよく見渡せる。
いい歳をして、清果はブランコに飛び乗ると、勢いよくこぎ始めた。
(ヒャッホ~イ!!)
清果は小さい頃から、ブランコが大好きだった。
高所恐怖症であるし、遊園地の絶叫マシーンには怖くて絶対に乗れないが、そんな清果にも、ブランコは程よいスリルと興奮を味わわせてくれる乗り物であった。
(やっぱりこの快感は、たまんないよな~ッ!)
さわやかな気分で、大空を仰ぐ。
「さぁてと…!」
足をついてブランコを徐々に止めると、清果はヒョイと腰を上げ、再び自転車に乗って公園を出ていった。
原っぱの前を、颯爽と通り過ぎていく。
そこに、「建設予定地」の看板が立てられていることには気が付かずに…。
今日は珍しく早く目が覚め、いつもより余裕をもって仕事場に到着した清果は、軽やかな足取りで社内へと入っていった。
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