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「お~。思ったよりもふかふかな毛皮だね。」
声は妖狼のいた場所から聞こえ、慌てて振り返ると、妖狼をなで回している少年がいた。妖狼もあり得ない対処に困惑している。
「何をしているの!危ないわよ!」
「へ?」
「グルァァアア!」
妹紅の声で正気に戻ったのか、妖狼は声をあげながら前肢を振りかぶった。
「っ!」
あれは避けられない。少年の無惨な姿を見ないために私は固く目を瞑った。
「・・・・・・嘘。」
しかし、聞こえたのは少年の悲鳴でなく、あり得ないとでも言うような妹紅の声だった。
「肉きゅうプニプニだ~!」
その声に私は目を見開き、妹紅と同様に驚いて声がでなかった。少年は妖狼が降り下ろした前肢を掴み、肉きゅうを指でつついていた。
「はい、ありがとね。」
礼を言って前肢を放し、妖狼の視線に合わせるように少年は前屈みになった。
「ねぇ、君も馬鹿じゃないなら僕に敵わないことは分かったでしょ?」
「クゥーン。」
「ん、いい子だね。ちょっと待ってなよ?」
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