日常が軋む時

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階段を降りると、施設のおばさんが立っていた。 「おはようございます」 「おはよう、沙羅ちゃん」 ――私は両親のことを覚えていない。 後に聞いた話だと、私が6歳くらいの時、この施設の前で倒れていたそうだ。 その時、私の右手の甲には『沙羅』と書かれており、それで私は『沙羅』と名付けられたらしい―― 私は、いってきまーす、と言いながら玄関のドアを開け放った。 太陽が眩しいくらいに輝いている。 一瞬立ち眩みを覚えつつも、時間が危ういことを思い出し、私は駆け出した。
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