48人が本棚に入れています
本棚に追加
階段を降りると、施設のおばさんが立っていた。
「おはようございます」
「おはよう、沙羅ちゃん」
――私は両親のことを覚えていない。
後に聞いた話だと、私が6歳くらいの時、この施設の前で倒れていたそうだ。
その時、私の右手の甲には『沙羅』と書かれており、それで私は『沙羅』と名付けられたらしい――
私は、いってきまーす、と言いながら玄関のドアを開け放った。
太陽が眩しいくらいに輝いている。
一瞬立ち眩みを覚えつつも、時間が危ういことを思い出し、私は駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!