信じぬ者の憂鬱

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「…はぁ」 ただ溜め息。飲み慣れないブラックのコーヒーは空の胃袋にいたく沁みる。通勤ラッシュの過ぎた駅のホームはえらく閑散として、そんな中、満面の笑みと仏頂面がベンチに同席していた。もちろん仏頂面は俺の方だ。なんとか愛想笑いを浮かべているが頬が引きつる。そんな俺とは対照的に満面の笑みの主は言う。 「美味しいですか?」 皮肉でも嫌味でもないのだろうがコーヒー同様胃に悪い。 「お陰様で」 目元だけ笑わずに返す。なぜ見知らぬ人間とこんな状況になったのか。事の顛末はこうだ。
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