信じぬ者の憂鬱

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目の前には缶コーヒーを差し出す同世代ぐらいの女の子がいた。救われた、と一瞬思ってしまった。そんな雰囲気が彼女にはあった。 「いや、でも見ず知らずの人にそんな」 だが戸惑いながらも流されかけて受け取りそうになったが丁重に断ろうとした。 「いえ、いいんです。あなたの行いは見ていましたからこれ位の見返りは当然です」 無言な俺。理解が追い付かない。 「あの、どういうことでしょうか?」 人見知りな俺は自分より幼く見える彼女に敬語で問う。 「あなたが電車に乗り遅れたのは善行の代償です。だからこれを受け取る権利は十分にあるんです」 エッヘン、とばかりに力説され缶コーヒーを渡された。分かるような分かっちゃ駄目なような気がしながらもそれを無理やり掴まされた…お礼を言うべきか逡巡して、それは俺が飲めないブラックコーヒーだと気付いた。
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