信じぬ者の憂鬱

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要約するとこうだ。ウチは安アパートなのだが、彼女は先日の夕方に隣に引っ越してきたばかりらしい。で、すぐに隣人であるウチに挨拶に来たが俺はその時間スーパーのタイムセールに躍起になっていた最中で不在だった。そしてウチには不幸にも姉貴しかいず、奇跡的に呼び鈴一つで出て来たらしい。 「なんか視線でやられそうになりませんでした?」 「寝起きみたいでしたが、哀愁と孤高を感じさせる姿できちんと応対してくれましたよ」 恐る恐る聞いてみたが、大分包容力のある方で良かった。姉貴のあれは身内の俺でも引くくらいの三白眼だからだ。寝起きともなれば切れ味三倍だ。 「それで姉貴には何か言われましたか?」 「あ、はい。弟さんが同じ高校だと分かると、引っ越してきたばかりじゃ地理もわからんだろうから、明日は一緒に行くといいって簡潔に言ってくれたんですよ」 「それで、速攻玄関を閉められたと」 「はい、立ち話を長くするのもなんだからと気を使っていただきました」 いや、それただ面倒臭かっただけです、という言葉をコーヒーと一緒に飲み込んだ。 「事情は飲み込めました。すいません、一方的に振り回すことになっていたみたいで」 どうやらブラックブラックコーヒーは飲めないとか言わなくて正解だったらしい。 「いえ、楽しかったですよ、私は」 「なら、すぐに声をかけてくれれば良かったのに」 「追い付こうと思ったんですが私、あんまり足が速くなくて」 あはは、と彼女は気を使ってごまかしてくれたようだ。平均的とはいえ、全力疾走した男子に着いてきたのだ。完全に非はこちらにある。頭が上がらない。 「っていうのは建て前で、本音を言えば、あなたの一連の登校風景が斬新的かつ魅力的だったので声をかけるの勿体無いなって思っちゃって」 「寧ろすぐに声かけてて下さいよっ」 速攻頭が上がった。image=399557327.jpg
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