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私は中学、高校時代、
勉強教えて貰ってくるという名目で
姉貴の家によく遊びに行っていた。
案の定というか、
勉強なんか教えて貰った事はない。
姉貴と話しをするのに夢中だったからだ。
別に姉貴は頭が悪かった訳ではなく、
(姉貴は中々、良い高校に通っていた。)
私が単純に勉強が嫌い。
そういう事だ。
姉貴の家は私の家から見える所にある。
時間を持て余していた私は
姉貴の部屋がある二階の電気がレース越しについている事を確認すると、
教科書の入っていない空の鞄を持ち、家族に
「勉強してくる。」
と言って姉貴の家に向かった。
然程離れていない姉貴の家ではあるが、
わざわざアリバイの為に
鞄に教科書を詰めるという行為が面倒だった。
玄関先に到着し、
インターホンを鳴らす。
「はーい。」
ドア越しに階段を降りる音が聞こえたと思うと
間もなく玄関の鍵が開いた。
「なんだ、君か。」
「二階の電気着いてたし、暇だったから遊びにきた。」
と少しだけ右手を上げる。
「あ、
もしかして友達来てた?
迷惑?」
「いや、
級友は皆住まいが離れてるからな。
よっぽどのイベント事でも無い限り、
家には来ないよ。」
姉貴はドアを大きく開き、
頭を傾げて中に入れとジェスチャーする。
「お邪魔しまーす。」
たいして心にも思っていない事を言って家に入り、
二階へ上がる。
慣れとは怖いものだ。
「一応受験生なんだがな。」
姉貴がドスンと勢いよく椅子に腰を掛けつつ呟いた。
…「ドスン」なんて効果音使ったら怒られそうだ。
私は椅子のある机の真向かいにあるベッドに腰を降ろす。
そこが私のいつものポジションだ。
「受験までまだあるから姉貴なら大丈夫っしょ?」
「そういう楽観的な考えが一夜漬けで悲鳴をあげる原因になる事を君は知らない訳でもないだろ?」
「…何故それを?」
痛い所を突かれたと同時に、少し驚いた。
家族には口実として勉強を教えてもらいに行くとはよく言うが、実際の所、
本当に教えてもらった事はないのだ。
そこには少々くだらないプライドというものが絡んでいる。
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