序章

3/6
前へ
/34ページ
次へ
「…………ふぅ」 車の影が見えなくなると、俺こと「菅原 晶太」は小さく溜め息をついた。 今日、俺の家族が妹が懸賞で当てた世界一周旅行へと "俺一人置いて" 旅立ってしまったからでもあるが。あんな事を言っておきながら3ヶ月もの間一人で暮らしていけるのか不安だからだ。 正直に言わせて貰えば、俺は家事が全く出来ない。 掃除に洗濯、料理なんて全て母さんと妹の愛に頼りっぱなしだった。 そんな俺がこの先3ヶ月を無事に過ごせるのかと問われたら、答えは"NO"。 一寸先は闇。と言う訳だ。 俺も一緒に行けばいいじゃないか と誰しもが思うだろうが、それも無理な話。 旅行の定員人数は三名までで、仕事の忙しい両親と、その両親にあまり甘える事が出来なかった2つ下の妹がいるのだ。 長男として、一人の兄として、俺には譲るしか選択肢は無かった。 そして、今の俺がやるべき事はというと。 「さてと……。家事、覚えるか」 そう。本を読みながら最低限の家事を覚える事だ。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加