昔の事?よしてください。聞いてもいいことないですよ

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雨の音で目が覚めた。 ゆっくりと起き上がり、窓辺へ。そこから見える畑に目をやる。 大丈夫。前日に施した葡萄への袋掛けが効果を発揮している様だ。 僅かに安心した矢先…硝子越しに自分の姿が映ると、苦々しく眉を寄せてくるりと背を向ける。 吐き気を催す嫌悪感、頭を駆け巡る言葉、あるはずの無い視線、浮かんで消えるあの人の顔、痛み、恐怖…… すべてを抑えその場に座り込み、視界を覆う様に手を当てるとそこには大きな傷がある。真一文字にばっさり、と。 「これだから…雨は苦手なんですよ。いつまで続けるつもりなんですかねぇ…」 自嘲しながら不死者は笑う。 溜息を一つ、空に放って…  雨。ナイフ。首。ルビィ。    赤。朱。紅。  これは、僕自身への戒め。 理をひっくり返してしまった自分への しっぺがえしなんだと、思う。
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