序章

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「はぁ‥はぁ」 暗い森の中で男は1人息を乱していた。 痴漢だとか連続殺人犯に襲われているだとかのレベルではない。 ただ男の思考を支配しているのは恐怖だった。 パキッ! 小枝を踏み折る音が微かに、だが確かに聞こえる。 私ではない‥、ならば誰が‥‥? そういう当たり前の疑問すら頭に浮かぶことすらなく男は、一目散に逃げ出した。 森の先は全く視認できず暗闇の海が広がっている。 さわさわさわ、と風が木々や木の葉をゆらし爽やかな音を立てている。 しかし、今の男には森が嘲笑ったかのように聞こえた。 森が、誘っているのだろうか? まるで生きているかのように森は不気味にさわさわさわ、と恐怖の音色を奏でていった。
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