秘密

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「これが、不思議な力を持った土なのか?」  思っていたより、サラサラしています。サインペンで小さな穴を開けてから、プリンをスプーンで掬って、そっと入れてみました。すると驚いた事に、穴の周りの土がサーっと寄って来て、穴を埋めてしまいました。 「すっすごい。おじいさんの話しは本当なんだ。これは本当に魔法の土なんだ。早速、お水をあげなくちゃ」  と、独り言を言って、また台所に戻ろうとした時です。ママが部屋に入って来ました。 「わあっ」  寛太郎は、驚いて飛び上がりました。 「何よ、そんなに驚いて。さては何か隠し事をしているわね」  ママはそう言って、部屋を見渡しました。 「あらっ、何、この可愛い植木鉢は?」  寛太郎は『しまった。やっぱり見つかっちゃった』と思い、 「そ、それはね・・・」  と、言葉に詰まってしまいました。ママは寛太郎の顔を覗き込む様に屈んで、 「寛ちゃん、本当の事を言いなさい」  と、少し怒った口調で聞きました。寛太郎は観念して、話し始めました。おじいさんとぶつかってしまった事、お財布を拾って届けた事、お礼に植木鉢をもらった事。でも、魔法の土の事は、言えませんでした。ママに言ってしまったら、 「魔法なんてあるわけないでしょ。そんな土は、公園の花壇にでも、撒いて来なさい」  と、言われてしまうと、思ったからです。   寛太郎の話しを聞くと、ママは、溜息をついてから、 「お財布を届けてあげたのは、良い事だわ。でも、知らない人には、付いて行かない様に、いつも言っているでしょ。そういう時は、一度お家に帰って、ママに言うのよ。そうしたら、一緒に落とし主を探してあげるわ。わかった?」 「うん。わかった。ごめんなさい」  と、寛太郎は言ってから、心の中で、 『魔法の土の事を隠してて、ごめんなさい』  と、もう一回謝りました。ママは『わかったわ』と答える代わりに、ニコっと笑って、 「寛ちゃん、何の種を植えようか?」  と、聞きました。寛太郎は、 「もう、植えたよ。僕、お水を取ってくる」  と言って、台所に向かいました。
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