Jの事件簿/ハーフボイルド

2/5
前へ
/5ページ
次へ
ギイィー。 事務所の扉が開くと共に、大きな荷物を抱えた自称所長が雪崩れ込んできた。 「おい亜樹子!なんなんだよこれは!?」 散乱した荷物を拾いながら、やや怒り気味に問い掛ける。 「寒いからお鍋でもしようかと思って。みんなも誘ってね」 「みんなぁ?」 俺はこの街の仲間達の顔を思い浮かべた。 ウォッチャマンにサンタちゃん、クイーンとエリザベスに、刃さんとマッキーに、照井。 そして…。 俺は半年前に自らを犠牲にし消えた、相棒の事を思い出した。 フィリップ。本名、園咲来人。 そいつと出会ったのは、俺達が「ビギンズナイト」と呼ぶ夜のことだった。 『悪魔と相乗りする勇気、あるかな?』 子供の無邪気さと、何かに怯えるような恐怖を兼ね備えた声が脳裏にこびりつき、今も離れない。 「翔太郎くん、どうかしたの?」 亜樹子に顔を覗き込まれてることに気付き、我に返る。 「別に、なんでもない」 そう言って胸の内ポケットに入った『Jのメモリ』をなぞる。 「もしかして、まだフィリップくんのこと…」 亜樹子の声を遮るように、扉が開いた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加