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ギイィー。
事務所の扉が開くと共に、大きな荷物を抱えた自称所長が雪崩れ込んできた。
「おい亜樹子!なんなんだよこれは!?」
散乱した荷物を拾いながら、やや怒り気味に問い掛ける。
「寒いからお鍋でもしようかと思って。みんなも誘ってね」
「みんなぁ?」
俺はこの街の仲間達の顔を思い浮かべた。
ウォッチャマンにサンタちゃん、クイーンとエリザベスに、刃さんとマッキーに、照井。
そして…。
俺は半年前に自らを犠牲にし消えた、相棒の事を思い出した。
フィリップ。本名、園咲来人。
そいつと出会ったのは、俺達が「ビギンズナイト」と呼ぶ夜のことだった。
『悪魔と相乗りする勇気、あるかな?』
子供の無邪気さと、何かに怯えるような恐怖を兼ね備えた声が脳裏にこびりつき、今も離れない。
「翔太郎くん、どうかしたの?」
亜樹子に顔を覗き込まれてることに気付き、我に返る。
「別に、なんでもない」
そう言って胸の内ポケットに入った『Jのメモリ』をなぞる。
「もしかして、まだフィリップくんのこと…」
亜樹子の声を遮るように、扉が開いた。
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