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「まだ引きずっているのか?」
赤いジャケットを羽織った、背の高い男が入ってきた。
照井竜、仮面ライダーアクセルとして、Wと一緒に風都を守った男。
「そんなだからいつまで経ってもハーフボイルドと言われるんだ」
冗談めいた言い草が妙に燗に触った。
「照井、てめぇ!」
拳を振りかざす。
だが照井は冷静に、俺の拳を片手で受け止めた。
「フィリップが見たら、失望するだろうな」
「なんだと…!」
俺はもう片方の拳を振りかざす。
だが、亜樹子がそれを制止した。
「やめなよ翔太郎くん!竜くんの言ってること正しいよ。フィリップくんは翔太郎くんを信じてるから犠牲になったんだよ?」
「お前に何がわかる!?」
つい口を荒げる。
「わかるよ!アタシがフィリップくんだったら…」
亜樹子の目から大粒の涙が零れる。
「翔太郎くんのバカ!」
買い物袋を投げ捨て、亜樹子は飛び出していった。
「…まったく」
俺はガレージに繋がる扉に手をかける。
「追い掛けなくていいのか?」
照井が俺に問い掛ける。
「…それはお前の役目だろ」
捨て台詞を吐き捨て、俺はガレージに閉じ籠った。
「亜樹子の奴、最近照井の肩ばかり持つようになりやがって」
いつ頃からかはわからないが、照井と亜樹子は付き合い始めた。
最初は亜樹子の片想いだったが、照井が亜樹子の押しに負け、付き合うようになったらしい。
が、今はそんなことはどうでもいい。
事務所にガレージがあることを知ったのは、ビギンズナイトの夜のことだった。
あの日、俺はフィリップと出会い、おやっさんを失い、Wになった。
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