Jの事件簿/ハーフボイルド

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俺は記憶を過去に遡らせる。 ビギンズナイトの翌日、あいつが「フィリップ」と名乗ったあの朝に…。 「目が覚めたかい?」 声がする。どこか大人びた、少年の声が。 目を開くと、そこにはあのビルで捕まっていた少年がいた。 「よかった。二度と目覚めないんじゃないかと思ったよ、あんなことがあったからね」 「お前は…」 誰だ、と言いかけて、自分がその少年の膝枕で寝ていることに気付く。 「っだぁ!」 慌てて飛び起きる。俺に男とイチャつく趣味はない。 「どうしたんだい?」 「いや…なんでもない。それより、」 俺はそいつに名前を聞きかけて、まだ自分が名乗ってないことに気付く。 相手に名前を聞く時はまず自分から名乗れ、おやっさんに教えられた言葉だ。 「俺は左翔太郎。あんた、名前は?」 「僕?僕の名前は…」 少年の顔が一瞬曇る。だがすぐ顔を上げ、 「"フィリップ"とでも呼んでくれたまえ」 と答えた。 「フィリップ?どう見ても日本人にしか見えねぇが」 「ニックネームみたいなものだよ」 そう呟くと少年は、巨大な車に手をかけた。 「…って、おいおい。なんだこりゃ…」 俺は思わず息をのんだ。 後部には巨大なホイール。 2本のアンテナに、赤い目の様なフロントガラス。 車、と呼ぶにはあまりに奇怪な乗り物が、そこにはあった。 「おい、なんだこりゃ?というか、ここどこだ?」 恥ずかしながら、俺は今の今まで自分の現在地を確認することが頭になかった。 「そうか、知らないんだね、君は」 少年は巨大な車に置いていた手をどかし、俺の方を見て説明を始めた。
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