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「これはリボルギャリーと言ってね、いわば"動く要塞"だよ」
「動く要塞?」
「そう、そしてここは鳴海探偵事務所。これはここにくるようプログラムされてあった」
一瞬理解できなかった。要塞?事務所?プログラム?
俺は視界に螺旋階段を捉えると、一目散にそれを駆け上がり、扉を開けた。
「おい、どうしたんだい?」
少年の声を背に扉を開くと、そこは確かに事務所だった。
「マジかよ…」
ドアの方を振り返ると、そこには巨大なガレージがあった。
「このドア、おやっさんに「幽霊が出るから開けるな」って言われてた…」
ずっと怪しいと思っていた、謎の扉。
ハードボイルドが売りの鳴海壮吉のくせに、幽霊が怖いなんて、と心の中で思っていたが、まさか幽霊ではなく、こんなバカでかいガレージだったとは…。
「びっくりしたろう?」
フィリップがドアからひょこっと顔を出す。
「のあぁっ!馬鹿野郎!ガレージじゃなくてお前にびっくりしたよ!」
思わず尻もちをつく。
「フフッ」、とフィリップは軽く笑い、
「どうやら君一人では探偵業は無理そうだね」
と皮肉を述べた後、
「でも、僕がいれば大丈夫かもね。相棒」
と、俺に細い手を差し伸べた。
「そうか…あれも、もう2年前か…」
俺はフィリップがいつも熱心に検索した内容を書き連ねていたホワイトボードをなぞる。
インクがすっかり癒着して、少し触ったぐらいでは取れなくなっている。
なぁ、フィリップ。
なんで、なんでお前が消えなくちゃいけなかったんだ?
お前は悪魔じゃない、ただの被害者じゃないか…。
ただ一人、俺の泣く声が、ガレージに響いた。
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