幸村と十勇士

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昔むかし、ある山の麓(ってか、高野山の九度山なんだけど)の奥深くに、小さな屋敷?がありました。 「……――ただいまぁー……」 「あ、殿が帰ってきた!!」 「ゆきむら様ぁ~!!」 僕、こと三好清雲(みよしせいうん)と双子の妹の三好涼雲(みよしりょううん)は、立ち上がって座敷を飛び出し、玄関に向かって走っていった。 「お帰りなさい、殿……ぉおおおお!!!?」 「どうしたんですかゆきむら様!!!?そのお姿は……っ!」 僕は驚いて思わず一歩引く。 涼なんか真っ青になって両手で口をおさえている。 「涼、濡らした手拭いを持ってこい……」 「は、はい、すぐに!」 そう言って足早に立ち去った涼。 僕はボロボロの着流しに血まみれの殿を見て聞いてみた。 「ど、どうなさったんですか?一体外でなにを……」 「うぅぅ……このやろう、修行だよ!!!」 殿は半分泣いていた。 ***** 涼の持ってきた手拭いで顔や体の血や泥を拭った殿は、さっさと着替えて広間に向かった。 僕はそのあとをついていく。 殿はとてもかわいい人だ。 年の割に童顔で背も小さい。 だけど男らしいところがあって、僕ら十勇士はそんな殿に惚れてここまで着いてきた。 殿はバンッと広間の襖を開ける。 「おい、そこの鬼畜忍コンビ……」 「「あ?」」 人相悪く振り返ったのは、十勇士屈指の天才忍さんたち。 猿飛佐助(さるとびさすけ)さんと霧隠才蔵(きりがくれさいぞう)さんだ。 「“あ?”じゃねえよフザケやがって!!!あれのどこが修行なんだよ!!!」 殿はガァーッと怒鳴った。
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