幸村と十勇士

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海野さんは優しく笑い、 「お命があるだけよろしいではありませんか」 と言った。 「修行で死ぬ武士がいるかぁぁあ!!!」 「あぁ、そーいやウチの殿は仮にも武士だったな!」 「小六……」 小六さん……本名根津甚八(ねづじんぱち)さんが広間の前を通りかかった。 「ここに住んでっと、武士とか忘れちまーわ!はっはっはっ!!」 でも武士は殿だけで、僕らは殿に仕えるただの勇士なんだ。 「くっそ……とりあえず踵落としの刑な!!」 殿は花札中の佐助さんと才蔵さんの頭に踵落としを決めた。 「おーい幸村ー」 「あ゙!!?この声は……鎌之助か?」 殿が庭を見ると、両手にたくさんの野菜を抱えた由利鎌之助(ゆりかまのすけ)さんが笑っていた。 「ちょっと村まで下りて、豚1匹仕止めてきてくれよ」 「なんで俺なんだよ!!?」 殿は仮にもこの屋敷の主で、武士で、殿だ。 鎌之助さんはぶぅ、と頬を膨らます。 「だって筧さんいねーんだもん」 筧十蔵(かけいじゅうぞう)さんは火縄銃の名手なんだけど、無口でクールで、普段はイマイチ何を考えているのか分からない。 前に僕は1日かけて、涼と一緒に十蔵さんのあとをつけたことがあったけど、山の中をフラフラして、たまに木登りをして、たまに川の水を飲んで、たまに座り込んで愛用の火縄銃・さと子さんの手入れをして、そして夕方に屋敷に帰ってきただけだった。
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