ピクハン

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長い時間、そうしていた気がする。 彼が落ち着いたころ、私は自分の都合 で会えなかったと改まって反省し、 ごめんと伝えた。 すると、何かを伝えようと口をパクパクと 動かしていたようだった。 「さみしかった。」 「怖かった。」 「ずっと、ずっと、一人だったんだ。」 声を絞り出して漸(ようや)く出た 言葉は嗚咽まじり、からだは震えていた。 もしかすると、今日、私が来るまで 同じ場所でずっと待っていたのでは ないかと、考えにたどり着いたその時 初めて後悔をした。 彼の名前を呼び、両手でゆっくり 顔をあげさせると、先程までの 怒りに染まった表情ではなく 眉をよせて、縋(すが)るような目とあった。 それは不安や怯えにも似た 表情だったと思う。 私は彼の頬を撫で、 ゆびで涙を拭ってやると ついっと顔を背けるられてしまった。 「もう、いい。離せよ。」 彼の台詞に、とうとう嫌われたかと思った。 すると、 「今日一日、僕に付き合って貰うから。」 覚悟しといてと、ぶっきらぼうに言われた。 私は、構わない むしろそのつもりだと答えると 彼は、こちらを見て少し驚いた顔を したが当たり前だよねと言って 悪戯っぽくニヤリと笑った。 これから毎日とはいえないが せめてあいた時間、少しでもいい 彼に会いに来よう。 それで許してくれるのだろうか。 「じゃあ、とりあえずPSPとDSもってきて あ、あとそろそろ3DS予約開始 したころじゃないか? カラーはレッドでいいから。」 ニコニコと私に笑いかける彼だが 何故か私は引き攣った笑い方でしか かえせなかった。 ・・・いや、これから機嫌をとるのが 大変だろうと考えながら 私はゲームをとりに自室へ戻った。
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