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長い間一緒に居たように感じる。
一人ぼっちだった私は、仕事もなく、貯金で過ごしていた。
ある日、人通りの少ない路地を徘徊していたところ
ボロボロになっているトイドルを見つけた。
私は寂しさのあまり、それを拾って家に持ち帰った。
シジマは人懐っこく、私を人見知りしなかった。
それどころか人間のように笑い、泣き、怒った。
よく食べ、よく寝て、よく遊ぶ。
どこにでもいる、子供のようだった。
そんなシジマの存在が私を支えてくれた。
いや、救われたというべきか。
シジマを家に連れて帰ってから、
私の生活が一変して、充実した
毎日を送っていた。
永遠と思われる時間を
共に過ごしてくれると、そう信じていた。
「私の時間は限られているのでしょう。」
シジマは知っていた。
ドール達がこれからどうなるかを
私の口から言えなかった。
言いたくなかったというほうが正しいだろう。
しばらくの沈黙のあと、シジマが私の手をとり、
「・・・マスタに出会えて、私は本当に幸せでした。」
シジマの言葉が、心臓を刺すように痛い。
シジマを直視出来なくて、俯いてしまった。
あぁ、私の可愛いシジマ。
君が傍から居なくなるなんて、
考えもしなかったのに。
悔しくて、悲しくて、切なくて
私はとうとう
しゃくりあげながら涙を零してしまった。
そんな私をシジマは、そっと抱き寄せ、
「マスタも心臓が苦しいのでしょう?
私と別れるのが悲しくて
泣いてくれているんですね。」というと
背中を撫で、宥めてくれた。
私は、鼻が詰まった声で、うんうんと何度も応えた。
するとシジマがクスと小さく笑う声が聞こえた。
私の顔を覗き込み、優しく微笑んだ。
「嬉しいです。」と言うシジマの表情は
眉を顰め、目は潤み、唇は震えていた。
込み上げる愛おしさに、堪らずシジマを抱きしめた。
次の瞬間、シジマの目から涙が溢れ出していた。
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