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正直で利発な彼に、智佳は興味と好感を抱いた。
「…助けて貰った事に変わりはないですし、私は嬉しかったです。…ありがとう。」
緊張が解けて来て、今度は自然にくしゃくしゃの笑顔になる。
真っ直ぐな智佳の笑顔に、少年は少し驚く。
(う…何て言うかこの人、凄く素直なんやなぁ。
照れる。
でもやっぱり、泣いてる顔より笑顔の方がずっとええな。)
(…とりあえず、良かったわ。)
「あ…いや、大した事ほんましとらんです。
走らせてごめんな。足、大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。 ふふ…足が凄く速いんですね。びっくりしちゃった。」
口元に手をやり、小さく声を出して笑った。
「そ…そか。大丈夫なら良かった。 …足速い?自分じゃ良く分からんけど…」
(確かに早い方やけど、そんなに速かったのだろうか?
…この人、トロそうやもんな。)
つい、苦笑してしまう。
「はい。私は足が遅いから、羨ましいです。」
突然な出来事に驚いたけれど…
私の手を引いて走る彼は、まるでヒーローや王子様の様だった。
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