57人が本棚に入れています
本棚に追加
静かで決して大きくないのに、凜とした透る声。
誰……?
顔を上げて、助けてくれた声の持ち主を見る。
小柄で細身。
少しだけ癖がある黒髪に、黒のフードが付いたジャンパー、眼鏡を掛けた男の子。
「何だぁ?このガキ…手ぇ放せよ!!」
いきなりの少年の登場に、一瞬面食らったものの、しつこいナンパ男は顔を少し赤らめながら声を荒げ、まくし立てる。
……!!
母子家庭で育ち、男性の怒鳴り声に慣れていない智佳は、思わずびくつき、身体を縮ませてしまう。
少年は全く動じる事無く、まるで小さなゴミを見るかの様に少しだけ目を細めた。
「うっさいのぅ…怒鳴らんでも聞こえるわ。
このお姉さん、嫌がっとるやないか。
ナンパなら、他当たれ。」
右手は相手の男の手を掴んだまま、しっしっ、と左手で追い払う真似をする。
少年の冷静且つ、毅然さ。静かながら小馬鹿にした態度に相手は苛立ちを顕わにした。
「いきなり現れてやがって…ヒーロー気取りかぁ?!このチビ!!」
チビと言う単語が聞こえた途端、急に空気の色が変わった。
…………
一瞬の沈黙。
最初のコメントを投稿しよう!