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昼下がり
私は泣いていた…泣いた…泣きすぎた
最後の家族を喪った
目が…鼻が痛い
目と鼻が磨れて赤くなるほど泣いた
ピンポーン
チャイムが鳴る
『こんな時に…KY』
私は涙を流し鼻を啜りながら玄関を睨み付け、呟いた
「幸さん…桃山幸さん」
『この声…』
また警察だ…
開ける気のなかった玄関へ向かう足は一歩一歩が重かった
『………はい………何ですか?………まだ何か?』
私は心無き言葉を警察に吐きながら玄関を開けた
「まだ実家に居らしたんですね?」
『まだ遺品が片付いてないもので…』
「そうでしたか…こんな時に何度もすいません」
分かってるなら……KY…
『…何か?』
「先日お亡くなりになったお姉さんの事で………」
『強姦…自殺ですよね?』
「はい…………」
『犯人は…?』
「…まだ捕まえられてません…」
警察は俯き目を合わす事なく呟いた
「犯人の写真です…心当たりありませんか?」
『見たくありません…』
沈黙が続いた
『見たくありません』
私は怒鳴った、涙を流しながら
「そうですか…写真お渡ししておきますね…心当たりがあったら連絡下さい」
『分かりました』
呟きながら玄関を閉めた
写真を見ないままポケットに仕舞いながら
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