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「突然ですが、ルーク。一般的に敬遠される仕事とはなんですか?」
何の脈絡もなくクリスはルークに尋ねる。
「なんでその話になるのか知らんが...危険、汚い、キツイ、この辺の仕事じゃね?...俺らみたいなな。」
ルークは俯き気味で返す。
「その通り、特に危険な仕事は一部のイカレポンチ以外は特に敬遠します。...監獄勤めとかは最たるものですね。」
「だから何だってんだよ?お前の話は回りくどくてしょうがねー、わかりやすく教えてくれ。」
ここまで言えば普通は感づくものだが、ルークには無理だったようだ。
「鈍いですね...多くは魔法を使った華やかな職に就きたいものなのです。誰が好き好んで陰気で危険な監獄の掃除なんかやりたがるんですか。」
「そんなヤツいねーよ。」
「そう...そんな方はいない。よって人手不足なのは自明。したがって、今回の作戦は内部潜入から始まります。」
ようやく大まかな方針が固まった。ところがルークは不満げであり、膨れた面をしていた。
「コソコソしてて気に入らねぇな...もっと派手なのねーのかよ?」
何とも稚拙な発言であるが、クリスは慣れた様子でそれをいなす。
「穏やかに、迅速に、正確に。それに越したことはありません。あなたのそのやり方は、近々起こるであろう大規模抗争のときにお願いします。それまでは、そのとき役立つ鬱憤を溜めておいてくださいね。」
腑に落ちない様子のルークだが、今は一先ず了としたようだ。
「わかった...」
「では、深夜清掃に入る用務員がそろそろ派遣されてくるでしょうから、急いで現場に向かいましょう。用務員を殺害し、清掃服を奪取、その後私が遺体を焼却しますので、服を着て監獄へ潜入します。」
非道な作戦を淡々と口にするクリス。そこに躊躇は一切なかった。
「了解、車用意してくるわ。」
「お願いします。」
二人の悪魔が、監獄へ向かう。
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