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「私と簡単な勝負をしましょう。なに、簡単なものです。」
「わかったー。」
軽いのりで女は男の口車に乗ったが、後にこの簡単な勝負は女の人生を狂わすことになる。
そのことを、女は知る由もない。
一方、男は口元を歪めた後、女にこう続けた。
「ルールは至極簡単。私がコインを投げますので、表か裏かを当ててください。数字の書いてあるほうが裏です、わかりましたか?」
男は丁寧に女にルールを説明した。
「わかった!」
「あなたが勝てば、私はあなたの店、いえホテルへ行きましょう。そして望むだけのことをして、望むだけの報酬を与えることを約束します。」
これを聞いた女の目の色が変わった。
「本当だね!?」
「ええ..」
「わかった!頑張っちゃうよ!」
女が舞い上がるのを見て、一呼吸おいて男が口を開いた。
「ただし...あなたが負けた場合は、私の魔法を受けて頂きます。そうですね、ピリッとする程度の雷の魔法です。怪我はしませんから、ご安心を。」
それを聞いた女は歓喜した。
なんておいしい勝負なんだろう、と。
しかし女は知らない。
世にそんなうまい話は、絶対にないということを。
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