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「ここが履物屋ですよ」
『華緒』と書いてある靴を模した看板を指差し、終はお梅を連れて店に入る。
「いらっしゃいませ」
店に入ってすぐ、若い娘が出迎えてくれた。
その背中からは、白い翼が生えている。
「お鶴ちゃん、お久しぶりです。お華さんは?」
「母様は靴を作ってます。終様、私ブーツを作ってみたんです!
ちょっと見てくれませんか?」
終が頷くと、娘はパッと顔を輝かせ店の奥へ行く。
「夜月はん、あの子は一体?」
お梅が娘に驚いていると、終が説明してくれる。
「彼女は鶴の妖で、お鶴さんっていいます。
『鶴の恩返し』っていうお話に出てくる鶴ですよ」
日本では有名な昔話。人間に恩返しした鶴が、彼女…お鶴だったのだ。
「それじゃ、お梅さんはゆっくり履物を選んでください」
終はそう言ってお鶴が持ってきた靴を眺めはじめ、お梅もずらりと並ぶ履物を選ぶことにした。
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