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「貴女がこの宵闇通りに来たということは、はぐれた芹沢さんもここにいると思います。
一緒に捜しましょう」
終の言葉に、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる。
芹沢もここにいると聞いて一瞬明るい表情になったお梅だが、すぐに不安げな顔になってしまう。
見ただけで広い通りなのに、芹沢一人を見つけることが出来るのだろうか?と。
それを察してか、終は安心させるように笑いかけた。
「ここで泣いていても、芹沢さんは見つかりません。
いつまでもうじうじとその場に留まるよりも、立ち上がって歩き出すべきでは?」
幼子を諭すような口調。
一見冷たい言い方だが、終の言葉はお梅を元気づけようとしてくれていた。
お梅は頷き、着物の袖で涙を拭った。
「まずは、お梅さんの傘を買いましょうか。それから、履物も」
泥だらけの足を見て、終は自分の草鞋を履かせる。
「履物店に着くまで、これで我慢してください」
「えっ、ええよ。店に行くまではうち裸足でも…」
慌てて首を振るお梅だが、終は譲らない。
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