ぷ、ろろーぐ

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 あたしの人生最後の瞬間。もう目は霞んでよく見えなくて、心電図の電子音が嫌に耳に残る。あたしを産んでくれた家族の顔も見えないし声もよく聞こえない。  そんなあたしだけど、身体の痛覚だけはしっかりと残ってるみたいで身体中が痛い。痛すぎてどこが痛いとかもよくわかんない。まあ、ほぼ全身が痛いんだけど。  ああ、もう死ぬんだなって感覚でわかる。たった十六年の人生だったけど、まあそれなりに幸せだったんじゃないかな?  優しい母さんに暖かい父さん。いつも明るく励ましてくれた妹。  小さい頃から病気がちで入院ばっかししてたあたしを支えてくれた家族を残していくのは気が引けるけど、でも、やっぱり仕方ない。  やりたいことはいっぱいあったけど出来なくて、この世界には未練だらけだけどやっぱり病気には勝てない。  だんだん意識が薄らいでくる。目の前が真っ白になってきて、嫌に耳に残っていた電子音さえ聞こえなくなってきた。  そんなあたしが死ぬ前に最後に見たのはぼんやりと映る家族の顔と、黒っぽい髪の見知らぬイケメンの男性だった―――― 「やあやあこんにちは。はじめまして柳千尋(やなぎ ちひろ)さん。私の名前はイエス。以後御見知りおきを」  
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