第1章「地獄の洗礼」

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名前も同様である。 じきに春江は、春江という名を失うのである。 春江は、周りを見渡したが、二十畳程の部屋の中に誰もいなかった。 それどころか、物一つなかった。 埃っぽいこの部屋は何のためにあるのか皆目見当がつかなかった。 ここは本当に地獄なのだろうか。 そう思わずにはいられなかった。 春江にとって地獄とは、針山地獄や血の池地獄など、鬼が罪人を虐めるというイメージがあった。 しかし、目の前にある光景は、そのイメージからかけ離れている物だったからである。
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