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その間、凛はずっと俺の袖を掴んだままであまり話し掛けてこなかった。
「一通り見たことだし、帰るか」
「……うん」
「ほら」
俺は凛に手を差し伸ばした。
「な、なに」
「いいからいくぞ」
俺は凛の手を引っ張り歩き出した。
「────っ!?」
凛は顔を赤らめたまま下を向いてしまった。
……。
…………。
………………。
なんだこの見事なまでの沈黙は。
さすがにこのままずっと家まで沈黙はとてもじゃないけど辛いぞ。
いくら兄妹だからって手を繋いで下校なんて普通はしないだろうし、客観的に見ればカップルに見えなくはないはずだ。
と、俺が悩んでいると、
「……今日は……ありがとう」
凛から話し掛けてきた。
ばかな! あの凛が人に言われずに自分からお礼を言うだと!?
「今日……本当は結衣と行くはずだったんでしょ」
「なんで知って──」
しまった、口が滑っちまった。
「……放課後になってすぐに結衣がケータイを使ってるのを見て、あー奏に連絡してるんだってすぐにわかった」
たしかに、あのメールの早さには驚いたな。
「あたしには結衣みたいには友達はいないし、奏は結衣に取られちゃうし……1人で帰ろうと思った時に電話がきて……。
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