入学式

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 な、なんていい子なんだ。  なんだかお兄ちゃん泣けてきたよ。  脛を擦りながら「痛いの痛いの飛んでいけー」なんて言っているし。  結衣……そんなことをしても痛いものは痛いんだよ。  俺が温かい目で結衣を見ていると―― 「かなで、結衣ちゃんとイチャついてないで凛ちゃんを追ったらどうだ?」  たしかに凛をなぜか怒らせてしまったみたいだしな。  ここで凛を追わないと後で何をされることか……。 「ありがとう結衣。お兄ちゃんはもう大丈夫だから」  俺が結衣の頭を撫でてあげると結衣は気持ち良さそう目を細めた。 「蓮、結衣のこと後は任せてもいいか?」 「まかせろ!」  蓮は親指を付きたてた。  俺は2人をあとにして凛の下へ走り出した。  俺は全力で走り続けた。  でもなんで凛は急に機嫌が悪くなったんだ?  結衣に会うまでは機嫌は良かったと思うんだけどな。  いや、そういえば今日は1日中様子が変だったぞ。  顔もずっと赤かったし。  もしかして──風邪か!  それにしても凛の奴いったいどこまで行ったんだよ。  インドア派の俺には全力走はきついぞ。  ──あれは。 「凛っ!」 「奏──なんでいるのよ」  凛の奴また顔が赤くなったぞ。  やっぱり風邪か。  もっと早く俺が気付いていれば……。 「ごめん凛! 俺が悪かった。何も知らずに」  風邪なのに連れ回して。 「謝ったって許してあげないんだから」 「本当にごめんっ!」 「……本当にそう思ってる?」 「ああ思ってる。なんでもしてやるから」  看病なら任せとけ! 「……じ、じゃあ……土曜日、あたしに1日付き合って」 「え?」  付き合う? 看病じゃなくて? 「だ、だから……あたしともデートしなさいって言ってるの! ──か、勘違いしないでよね! ただの暇潰しなんだからね!」  そうよ、これはただの暇潰しなんだから……と、小さく付け足す凛。  よくわからないけれど、それで凛が元気になるんなら。 「分かったよ。土曜日な」  なんでもするって言った手前断るわけにもいかないしな。しゃーなしだ。  それにしても、結衣と凛が同じ学校に通うことになっただけで、こんなに疲れるなんて。  やっていけるのかな俺……。
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