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「ちょ、奏!? な、なにしてんのよ!? 離れなさいよ!」
「嫌だ!」
「い、嫌だって……」
「今離したら、絶対俺を殴る気だろ!」
「殴んないであげるから、早く離れなさいよ! ──じゃないとあたしが恥ずかしくて堪えれないわよ」
ん? 今日の凛はよくぶつぶつつぶやくな。
友達がいなさすぎて、独り言が増えてるのか?
それはそれで兄として凛のことが心配だが、今は自分の心配だからな。
「いい加減に──しなさい!」
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
ジタバタと布団の中で暴れる凛は渾身の力を込めたのか、俺は耐え切れずに凛を抱いたままベッドに倒れ込んでしまった。
「痛たたた……大丈夫か、凛?」
俺は頭を抑えながら聞く。
「え、う、うん。大丈夫」
俺は閉じていた目をゆっくりと開ける。すると、眼前に頬を紅潮させている凛の顔があった。
その距離僅か数センチ。
俺の額に凛の垂れ下がっている前髪が触れるほどの近さだ。
「…………」
言葉を失う俺。
えーと、これはどういう状況だ?
冷静に1つ1つ把握しよう。
俺は布団に包まれている凛と一緒に倒れた。
俺の眼前には、瞳に俺が映っていることが視認できるほどの距離で凛の顔がある。
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