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俺の背中には確かにベッドの感触がある。
つまり俺の上に覆い被さるように凛が乗っているわけか。
それもうまい具合に凛を包んでいた布団が広がって、俺が寝ているところに凛が乗っかってきたかのようだ。
これではまるで、俺が凛に夜這いをされている図じゃないか!
だからといって何とかしようと少しでも動けば、凛とキスをしてしまいそうだしな。
そんなことをしたら確実に殺されてしまう。
危険だ。とても今の状況は危険だ。
「……奏……」
と、俺がどうやってこの状況から抜け出そうかを思案していると、少しもさっきから動こうとしない凛が話しかけてきた。
「ど、どうした?」
「……奏……──ううん。お、お兄ちゃん……ホントにあたしを好きなら、このまま一緒に寝てもいい?」
お、お兄ちゃん!? 凛がお兄ちゃんだと!?
凛が俺をお兄ちゃんって呼ぶのなんて、何年振りだろう。
それに、こんな風に甘えてくるなんて。
俺は眼前にある凛を改めて見る。
頬は紅潮させ、瞳はうるうると潤んでいる。その瞳には俺が映っていて、少し気恥ずかしい。
桜色の唇は僅かに開き、そこから微かに漏れる吐息が俺の頬を撫でる。
俺は衝動的に抱きしめキスをしたくなったが、瞬間ギュッと目を瞑り、なんとか理性で寸前で留まった。
「ああ、いいよ」
「ん、ありがと……」
そう言うと、凛は密着したまま俺の身体からスルッと左側に滑るように移動し、腕と左胸の間ら辺に顔を埋めた。
なんてことだ! 期せずして夢にまで見た腕枕になってしまった!
リアルでの腕枕なんて、彼女がいなければ絶対に出来ないと思っていたけど、まさか妹でそれが叶うとは。
「あっ、お兄ちゃんの心臓の音が聞こえる」
俺は気恥ずかしくなりながらも、すぐ左にある凛の顔を、僅かに顔を動かして見る。
俺の鼓動を聞きながら、それを子守唄替わりのように聞いている凛の表情は、とても柔和な顔をしていた。
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