2012人が本棚に入れています
本棚に追加
右胸は、抱きついて寝ているから自然俺に当たっているわけだ。つまり触れているが触れないという変な状態。
まあでも、俺も右腕1本しか自由は利かないわけだからよしとしよう。
と俺は加速した脳内で素早くそんなことを考えているうちに、凛の胸まであと5cmとまで迫った。
──その時。
突然タンタンタンという、誰かが階段を上ってくる足音が俺の耳に伝わった。
やばい!? この軽快な上り方は──
俺は慌てて右手を急停止させ、その手を布団の中に突っ込む。そして目をギュッと強く閉じ、あたかも寝ている風を装った。
直後、バタンというドアの開閉音と共に予想通り結衣の声が響く。
「お兄ちゃ~ん! なかなか降りてこないから結衣さん様子見に来たよぉ! ……って……え、これはどういうことなのかな……?」
俺と凛は結衣から見たら仲良く2人で寝ているように見えているはずなので、後半の言葉は誰かに向けて言ったものではないはずだ。
俺は結衣に気づかれないように右目を薄らと開け、結衣の様子を確認する。
すると結衣は何かに取り憑かれたかのように、右に左にゆらゆらと揺れながら、まるで一歩一歩に全体重を預けているような歩き方でゆっくりと近づいてきていた。
最初のコメントを投稿しよう!