始まりはいつも突然に

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 その時、館内の騒々しさをかき消すかのように璃緒先輩はバンッと演台を両手で叩いた。 「あなたたちの言いたいことはわかるわ! 特に、敗退チームのはね。だけど、その気持ちを声援に変えてこの球技大会を盛り上げてちょうだい!」 最後の言葉に合わせて璃緒先輩はもう一度演台を勢いよく叩く。と同時に胸も見事に揺れる。  そして一瞬の静寂が漂った後に、「うわぁぁぁっ!」という館内がどよめくほどの歓声が上がった。  璃緒先輩はそれを手で制してから、 「話は以上よ。みんな、聞いてくれてありがとう」  そう言い一礼すると、見蕩れるほどの華麗な動作でスタスタと壇上を下りていく。  その後は球技大会実行委員の指示で解散と同時に、準決勝戦第一試合の選手たちは各々の体育館へ向かった。  ちなみに俺は第二試合だし場所も今いる第1体育館なので、ちょっと璃緒先輩に先程の件のお礼を兼ねてあいさつをしに行くことにした。  璃緒先輩を捜す手間はかからず、先輩は壇上から降りた後に立っていた場所から移動していなかったので、俺は先輩が立っている体育館の右奥隅に向かった。  館内はまだ移動中の生徒達で溢れているので、俺は他の生徒を掻き分けるように向かっていき、生徒の波から抜け出たところで璃緒先輩も俺に気づいたらしくこちらを向いてきた。 「どうも、先輩」  俺は軽く会釈しながら璃緒先輩の正面まで近づくと、立ち止まった。 「お姉さんになにか用かしら? 坊や」  璃緒先輩は自身の豊満な胸を支えるように──無意識なんだろうけど──腕を組んだ。  俺はつい反射的に、無意識的にその支えられていることによって上に押し上げられている胸に視線を向けつつ応える。 「えっと、その、先輩にお礼を言っておこうと思いまして。ありがとうございます、璃緒先輩……いろいろと」  俺は昨日の試合中に璃緒先輩の下着を見たことと、今のこの胸を拝んでいることを含めてお礼の言葉を告げた。
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