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璃緒先輩は華奢な口許を抑えながら「ふふふ」と微笑む。
こうしてある程度璃緒先輩と話していると、先輩の魅力をこれでもかというほど知ってしまう。
これは全校生徒が知っていることだがその豊満な胸、それから細っそりとした柳腰、しなやかな指、傷みが全く見当たらないほど綺麗に保たれている長い髪、そして整ったその顔。
全校集会などで見る度綺麗な人だとは思っていたけど、こうして近距離で正面から改めて見ると、その美貌に感嘆の声を漏らしてしまいそうだ。
こんなことを考えているということは、当然璃緒先輩の微笑んでいる姿に見蕩れているというわけで……。
「──坊や」
「………は、はいっ」
「お姉さんに見蕩れてしまうのは至極当然なことだけれど、その顔はみっともないわよ?」
「え? ……うわやべっ!」
俺はどうやらあまりにも見蕩れ過ぎていて口許が緩んでいたらしく、よだれを垂らしかけていたようだ。あっぶねぇ……。
「お見苦しいところをすいませんでした」
俺は恥ずかしさを表に出さないように抑えつつ謝る。
「今度からお姉さんと会うときは気をつけることね、ふふふっ」
先輩は先程と同じように華奢な口許を右手で抑えながら微笑む。
その微笑にまた見蕩れそうになるのを自制心でなんとか堪えていると、不意に全競技の開始時間を告げるアナウンスが館内に鳴り響いた。
「もう開始時間なのね、早いわ」
「璃緒先輩と話してると時間があっという間でしたよ」
「ふふっ、そうね。お姉さんも楽しかったわ、また機会があればお話をしましょうか。──それじゃあ」
そう言うと、璃緒先輩は手をひと振りしてから俺の横を通り過ぎていった。
俺は璃緒先輩が体育館から出て行くまで後ろ姿を見送ると、入口側コートでまさに試合が始まる寸前のバスケットボール準決勝第1試合を観戦しに、2階へと向かった。
そういえば璃緒先輩が体育館を出て行ったっていうことは、第2体育館で行うバレーボールの試合でも見に行ったのかな。
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