始まりはいつも突然に

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 さすがの璃緒先輩も準決までくると、少しは警戒しているのかもな。そうでもなければ、わざわざ自らが観戦しに行く必要なんて実力的にないわけなんだし。  と俺が勝手に先輩の行動を独り推測していると、館内が歓声で溢れた。  俺はどうしたんだという風に視線をコートに戻すと、どうやら先取点をいきなり3Pシュートで決めたようだった。  決めた人は恐らく、3Pラインでガッツポーズを応援しているクラスメイトの女子達に向けているあの3年生だろう。  ……あれ? なんかあの人どこかで……。 「あの人ってたしか、先月くらいにお姉ちゃんに告ってた人だよね?」 「あーそうね。例外なくフラれてたけどね」 「結衣!? 凛!?」 「やっほーお兄ちゃん。結衣たちもこっちを見に来たよ」 「あ、あたしは結衣に付いて来ただけなんだからね。ふんっ」  俺は突然の結衣と凛の登場に驚きつつ、2人が言っていたことを思い出しながらコート上の3年生に視線を戻す。  そういえばたしか、結衣の言っていた通り先月の終わりくらいに、あの人があや姉に告白していたところに偶然出くわしてしまったという記憶が頭の片隅にあるのを、俺は脳をフル活用してなんとか思い出した。
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