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すると、ブブブッとテーブルの上に置いてある俺の携帯電話――この夏やっとスマートフォンに機種変更をした新機種だ――がメール受信を知らせてきた。
俺はそれを手に取りメールをチェックすると、
「お兄ちゃん、なんだったの?」
隣に座る結衣が小首を傾げて訊いてくる。
「ああ……んー、まぁ……もうすぐわかるさ」
「ん……?」
――ピンポーン。
結衣が頷いてすぐ、本日3度目の呼び鈴が鳴り響いた。
「はぁ~……ちょっと行ってくる」
「結衣さんも行く!」
「いいよ、すぐ戻る」
俺は結衣の頭をひと撫でしてからリビングを出ると、訪問者でありメールの送信者でもある人物が許可したわけでもないのに勝手に玄関の扉を開け仁王立ちで待っていた。
「遅いっ! チャイムを鳴らしてから何秒経ってると思ってるの!」
「それより俺は我が家への立ち入りを許可した覚えがないんだが?」
「下僕の物はわたくし様の物! つまりこの家だってわたくし様の物なんだから勝手もなにもいいに決まってるじゃない!」
「お前はどこのガキ大将だよっ!」
「わたくし様は音痴じゃないわよ!」
忘れてるようだけどアイドルなんだから、ふんっ、と付け足すご主人様。おっと、ひまりだった。やばいやばい。下僕がいたについてきていて危ないな。気を付けなければ。
「で? メールにも書いてなかったけど、いったい何しに来たんだよ?」
「わたくし様の宿題をやりなさい!」
「はあぁっ!?」
「わたくし様はアイドル、つまり忙しいの、下僕と違ってね。だからわたくし様の代わりに下僕のあんたがやりなさい!」
「お前はバカなんだから自分でやらなきゃダメだろ」
「んなっ!? 今わたくし様をバカって言った!? 言ったわよね!? ちょっとありえないんですけど! このわたくし様を侮辱するとかありえないんですけど! 踏み付けるわよ!」
「えっ、いいの!? お願いします!」
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