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「なんでもいい……奏といれれば」
尻すぼみに小さくなっていく凛の声を最後まで訊き取ることはできなかったけど、なんでもいいとは言ったな。
……あれ、ちょっと待てよ。凛に訊いてしまった時点でリードできてなくね?
もしかしてすでにリード失敗!?
このままだと好感度が落ちて、凛パートを失敗してしまう。
いやいや、別に凛を攻略しようなんて思ってないぞ。
……思ってないよ?
…………思ってないんだからね!
と、とにかくデッドエンドだけは阻止しなくては。
「じゃあメリーゴーランドにでも乗るか?」
「な、なんでそんな子供の乗り物に乗らなきゃいけないのよ!」
「え? だってそりゃあ……」
凛は体調が良くないみたいだし、メリーゴーランドのようなゆっくりした乗り物の方がいいと思うんだけどな。
「──っ!?」
凛はなぜか、急に俺から何かを隠すかの様に自分の身体を抱いた。
どうしたんだ? やっぱり風邪で寒いのだろうか。
「どこ見てんのよ!」
「は? ──ぶごっ!!」
なんの前触れもなくいきなり殴るだと!?
くっ、何か黒い者がちらついて見える……。
「お、俺が何をしたっていうんだよ」
鼻を擦りながら訊くと、
「あ、あたしの、む、胸が子供並みだって言いたいんでしょっ!」
……はい? いきなりそんなことを言われましても。
そんな凛は頬を朱に染め、瞳には涙を溜めながら、うぅ~、と小さく唸っているし。
……か、可愛い。
でもなんだか無性にいじめたい!
「たしかに凛の胸は子供並みだよね」
「そ、そんな改めて言わなくたって……」
「でも、そんな凛でも胸が大きくなる取って置きの方法があるぞ」
「……ほんとに?」
凛は瞳に溜まった涙を手で拭いながら訊いてきた。
うっ、そんな可愛い顔をされると、これからしようとしている事に罪悪感が。
「あ、あぁ、本当だよ。兄に任せなさい」
俺は両手を前に突き出し、何かを揉む動作をし始めた。
「え? なにその手。ちょ、ちょっと本気じゃないよね?」
凛は朱色に染めていた顔を蒼白にし、両手で自分の胸を隠して後退りし始めた。
「ねぇ……マジでそんなことしたら殴るわよ……ちょ、ちょっと、ねえ」
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