双子の嵐(ジェミニ・ハリケーン)~凛編~

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 そろそろ止めておくか。  俺が凛の胸に触れそうになったところで手を止めたその時。  ガシッ! 「ちょっと君、こっちに来なさい」  ……猫?  着ぐるみを着た係の人が俺の手を掴んできた。  えーと……これはまずいよね。 「いや、あのー……僕達、兄妹なんですけど」 「そんな出任せを信じるとでも思ってるのか? いいから来なさい」 「り、凛! 助けてくれ!」 「…………」  ふんっ、と凛はそっぽを向いてしまった。  なんて薄情な妹なんだ。  凛に見捨てられた俺は、引っ張られるがままに着いて行くことにした。 「君、高校生? どこの学校なの」 「し、私立桜蘭高校です」 「なんでそんないい学校の生徒が、痴漢なんてしてるんだ」 「違います。本当にあの子は妹で、ふざけてただけなんです!」 「ふざけてただけねぇ。そのわりには女の子は怖がっていたよ?」  た、たしかに。  ちょっとやり過ぎたかもしれないけど触れる前に止めたじゃないか。  この人はどこを見ているんだまったく。俺は濡れ衣だぞ! 未遂だぞ!……未遂って痴漢って認めてることと変わらなくね?  俺が内心で猛抗議をしていると。  ガチャ。 「あの……その人は本当にあたしの兄なのでもう大丈夫です」
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